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ウォークマンNW-S760シリーズレビューの続き、今回はiPodユーザーが最も気になると思われる音質編。
今やウォークマンでもAACが普通に扱えるようになり、ATRAC Advanced Losslessというロスレス形式もある。うるさいことを言わなければ、デジタルデータとして音質の差はないはず。
音質という点でiPodとウォークマンを比べてiPodが有利な点は、出力が高いので選べるヘッドホンの幅が広いことだろう。
個人的印象としては、iPodの音は一眼デジカメのRAWみたいなもので、あまり手を加えていないという印象。なので良い悪いというよりも「物足りない」と感じるケースが多いのではないだろうか。
イコライザはあるにはあるが、どれを試してもあまりしっくり来ないし、そもそもiPodのイコライザはプリセットから選ぶだけなので面白みがない。
改造というリスクを伴う手段を別にすれば、ヘッドホン側で工夫(ポータブルアンプを使うことも含めて)するのがiPodでの音の楽しみ方だ。
一方のウォークマンは、低めの出力をノイズキャンセルや、iPodより自由度の高いイコライザなどで補っている。さっきの例えで言えば、現像後のJPEGのようなものか。「細かいことを気にせずパッと見てキレイな写真」というイメージだ。
ウォークマンのイコライザは効果が分かりやすく、調節も簡単なのでお勧めだ。もっと細かく設定できるようにし、ユーザー設定を保持できる数をもっと増やしてくれれば言うことなしだが、現状でもiPodに比べれば十分に自由だ。「好きな音を好きな音質で楽しむ」ことがゴールだとするなら、iPodよりもずっと近い位置にウォークマンはいる。
ひとつ気になったのは、音楽再生画面からクリアステレオやDSEEのオンオフが選べないことだ。たしかX1060ではできたはずなのだが、N760ではイコライザとVPT(サラウンド)しか項目がなく、いったんトップ画面から設定にアクセスしないと変更できない。基本的にオンのままで使う項目なので問題ないといえばそうなのだが、以前できたことが今できないのは何ともモヤモヤする。
ちなみにぼくが使っているイコライザのカスタム1は、
CLEAR BASS : 0.4kHz : 1.0kHz : 2.5kHz : 6.3kHz : 16kHz
+3 : 0 : +1 : 0 : +1 : +2
だ。ほとんどはこれだが、曲によってはカスタム2
+2 : +1 : 0 : +2 : +1 : +2
を使うこともある(VPTはマトリックス、DSEE/クリアステレオはオン)。
このセッティングは、ヘッドホンはMDR-EX600SL、付属イヤホン、もしくはMDR-NWBT10Nなどソニーのカナル型を基準にしている。
音質に関わるもう一つの要素、ノイズキャンセリングについて。
付属イヤホンはデジタルNCで98%の騒音低減を謳っており、アナログNCで90%というMDR-NWBT10Nよりも強力だ。
USB扇風機や空気清浄機の音で試してみたが、たしかにデジタル式の方が効果は高い。とはいえじっくり耳をすましてやっと分かるようなレベルだ。いろんなノイズの元で使ってみて初めて真価がわかるのかもしれない。ちなみに、静かなところでは逆にノイズキャンセルで発生するホワイトノイズっぽい音の方が気になる。
ただ、NWBT10Nと同様、オンとオフでの音質の違いがかなり抑えられているのは良い。また、うるさい屋外でも音量を小さく絞れるのは間違いなく利点だ。カセットウォークマン時代から難聴対策だの何だのと迫られてきたソニーにとって、小さい音でいかに迫力を出すかというのはかなり大きなテーマなのだろう。
トータルで見て、S760の音質は普段遣いには十分だと感じた。Aシリーズのフルデジタルアンプなどは気になるが、オーディオ関係はあまり上を見ることなく適度に満足するぐらいがちょうどいい思われるので、深く追求しないことにする。