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6月24日、Appleから新型携帯電話“iPhone 4”、コナミからニンテンドーDS用ソフト“ラブプラス+”が発売になった。幸運が重なって、iPhone 4はソフトバンクオンラインショップ経由で25日に届き、ラブプラス+はスペシャルパックとプレミアムパック、そして通常版を1本ずつ発売日に入手することができた。
巷では未だに品薄であり、ともに大騒ぎを起こしたこの2つについて、共通点を感じたのでいろいろと自分なりに考えてみた。
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・触れて楽しめる
iPhoneは使いやすい、とよく言われる。それらしいところを触れば動くので、基本的な操作はマニュアルを読まずとも何となく使えるようになっている(とはいえ、初心者にはピンチやフリックなどがタップに比べて分かりにくいというのが個人的実感だが)。また、ハードウェアとソフトウェアを同じ会社が手がけていることによる一貫性、というのもよく言われる。
そして何より、操作に対する反応では極めてアナログな「手触り」を大事にしており、サクサク動きつつも要所要所で手応えを感じさせるような作りをしているため、数値化できない気持ちよさを感じさせるのがiPhone、ひいてはiOSデバイスのうまい所だ(つまり、Appleが提示する「作法」に則りさえすればうまく行くようにできていて、逆にそれがイヤだと感じる向きにはどうも馴染めない)。
一方ラブプラスは、ひと言でまとめれば「恋人と過ごす時間を楽しむ」のが主目的のゲームだ。ニンテンドーDSのタッチペンを生かして、触れると画面の向こうの女の子が反応を返してくれる。DSでよくぞここまで、と思うような細かい動きとフルボイスによって手触りを追求しているのだ。
また、DS本体の時計と連動したリアルタイムモードを基本していて、彼女たちはそれぞれの生活を送っている。ゆえに、デートの約束は時間前にDSを起動しなくてはならなかったり、リアルの生活に寄り添ったプレイが求められる。どうしても辛いならゲーム内時間をズラすこともできるし、スキップモードという手も用意されているが、リアルタイムモードでなければ発生しないイベントなどもあるため、100%楽しもうと思うならやはりリアルタイムモードを選ぶしかない。これも、ラブプラスというゲームにリアルな「手触り」をもたらす要素のひとつだ。
要するに、「何かすれば何か返ってくる(しかも直観的である)」点でよく似ていると言える。
・現実を拡張する
どこでも持ち運べるiPhoneは、twitterなどのいわゆるミニブログ、あるいはbrightkite、foursquare、Gowallaなどの位置情報サービスと非常に相性が良い。セカイカメラのような文字通りのARももちろんあるが、twitterでのゆるい繋がりから始まるイベント、あるいはみんなでUstreamやTVを見てつぶやくこと、foursquareのチェックインでクーポンがもらえるキャンペーン(日本ではやっていないが)のようなものも、ある種の「現実の拡張」と呼べると思う。
ラブプラスはiPhoneよりもっと進んでいて、すでにカレシ(ラブプラスプレイヤーの総称)が「デート」と称してDSを片手にあちこちに行く「エクストリーム・ラブプラス」なるものまで登場した。作り手の思惑を超えて、ユーザーが独自に生み出した使い方だ。
そこでラブプラス+ではそれに応えるためか、「ご当地ラブプラス」というシステムが登場した。これは各都道府県のDSステーションに接続することで、スタンプラリーのように地元にちなんだ格好をしたヒロインたちのフィギュアがダウンロードできるというもの。もちろん一人で47都道府県を制覇するのは難しいので、このコレクションはDSのすれちがい通信などによっても交換できるようになっている。初代ラブプラスから搭載されていた「会話モード」(通信対戦の要領で接続すると、それぞれの彼女が自分の状況をしゃべり出す)と併せて、ユーザー同士が交流できる仕組みを用意しているわけだ。
ちなみにラブプラスにはiPhone版もあるのだが(DS版とは違い、時計やカレンダーを搭載したアクセサリ集のようなもの)、これに搭載されたARカメラ機能を使うとヒロインたちを現実の世界に出現させたり、自分とツーショットを撮ったりもできる。最近のアップデートで獲得済みのご当地ラブプラスフィギュアも撮影できるようになるなど、iPhoneとDSを両方持っているといろいろ楽しめるようになっている。
プロモーションも力を入れていて、TV Bros.など雑誌の表紙への露出、バレンタインデーにはARマーカーを仕込んだチョコを発売、ラブプラス+で追加された旅行イベントのために熱海の大野屋という実在の旅館とタイアップしたり、発売記念イベントではリアルタイムで動くヒロインたちを登場させるなど、より彼女たちの存在感を強調するような仕掛けを行っている。
本来の意味とは少々異なるが、現実の生活を今まで無かった方向に拡張してくれているという点は共通していると思う。
・手堅く進化している
iPhone 4は、一新したデザインについては好みが分かれるかもしれないが、CPUやメモリの強化、大容量のバッテリー、高解像度液晶、カメラ強化&フロントカメラ搭載、第2マイクによる通話品質向上など、地味ながら必要性も効果も高いスペックアップを果たした。おかげで何をするにも快適そのもので、iPhone 3G(昨年に発売した3GSではない)からの乗り換えはちょっと感動するレベルで違うが、だからといって2007年に初代iPhoneが登場した時ほどのインパクトがないことは確かだ。
ラブプラス+はラブプラスにイベントや音声などを追加したものであり、プロデューサー曰く「シーズン2のようなもの」というべき存在だ。だが、前作で寄せられた声などを反映してか細かい操作上の引っ掛かりがいろいろ解消されているし、音声やモーションのパターン、イベントなどが追加されていろいろとできることが増えたおかげで、彼女たちへの感情移入がいっそうしやすくなっている。が、やはりゲームの根本はいっしょなわけで(あえてそう作っているのだろうが)、そういう意味でインパクトは小さい。
「神は細部に宿り給う」というといささか大げさだが、細かい部分をしっかり作り込むと全体がよりリアルに見え、触れる喜びが大きくなる。どちらもその点をしっかり追求しているおかげで、この手のシリーズ物でありがちな「以前の方が良かった」と思うことが非常に少ない。これは非常に良いことだと思う。
・販売方法に問題あり?
iPhoneは6/15に予約受付が始まったが、アメリカではAppleとAT&Tのサーバがダウン(しかもAT&Tは個人情報が漏えいする深刻なトラブルも発生)し、ソフトバンクもあまりの予約殺到ぶりに登録システムのエラーで手続きが止まるなどの事態が発生した。結局18日に予約をいったん締め切るが、それでも予約者全員には行き渡っていない(ちなみに、予約は24日に再開したそうだ)。
一方で、少数かつ店舗限定ながら当日販売分が用意されたため不満の声も上がっていたようだ。工場を2倍稼働して先行リリースを5カ国に絞るなどそれなりに対策はとっていたようだが、それでも全然足りないのはAppleの予想以上に引き合いが多かったということなのだろう。
ラブプラス+の販売についてはこちらの記事でも多少書いたが、その後に予約を受け付けたビックカメラはものの15分で完売、発売前日に抽選を行ったメッセサンオーには、各色2台合計6台の枠に1000人も集まったという。やはり需要に対してぜんぜん供給が足りないということだろう。ただ、iPhoneは待っていればいずれ手に入るのに対して、こちらは限定品なので(コナミと任天堂が再生産という英断をしないかぎり)もう手に入らないという焦りもあっての騒ぎだとは思う。
どちらの場合もメーカー側の不手際ではあるが、作り手の予想を超えて大ヒットした証であるとも言える。
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というわけで、取り留めない長文になってしまったがいかがだろうか。
片や世界的大ヒットのデジタルガジェット、片や日本ローカルにコアなファンを持つゲームソフト、モノとしては似ていないのに魅力はよく似た点があるというのは、なんだか不思議な話だ。