スキップしてメイン コンテンツに移動

GALAPAGOSは電子書籍の夢を見るか?

まず初めに「ガジェット好き/新しもの好き/電子書籍好きとして、シャープにはけっこう期待している」というスタンスであることを表明しておく。

 日本の電子書籍市場は、いわゆるガラケー向けの電子コミックなど以外はまだ始まったばかり。北米への展開をすでに発表し、いずれは世界展開をにらむシャープのGALAPAGOSだが、まずは日本でポジションを築く必要がある。すでに一定数が売れて足がかりを作っているAppleのiPadや、まだ見ぬ巨人AmazonのKindle、北米で成功を収めたSONY Readerが控える状況で、どうすればシャープが勝てるかを考えてみた。
 CEATECで触った限りでは、多少のカクつきが気になった他は概ね不満の少ないハードウェアになっていたと思う。もちろん軽量化や電池強化、高速化などを怠るべきではないが、最低限のラインは満たしていたように感じた。おそらく問題は、12月にハードウェアといっしょに提供されるサービスの方だ。

ポイントは三つ。

1.コンテンツの量
2.自社ハードウェアにこだわらない柔軟性
3.ユーザーの側に立ったシステム

1.コンテンツの量
 まず何といっても本の取扱数を増やすこと。出だしは3万冊を揃えるとのことだが、AmazonのKindle Storeではすでに70万冊を突破したという。世界的に見れば英語の書籍の方が多いだろうし、Kindle発売から約3年が経っていることもあるが、それを差し引いても凄まじい数だ。ただ、よくよく考えてみるとシャープはザウルス時代から電子書籍が読める環境をずっと提供してきた(コンビニ端末でCFカードに書籍をDLしたのも今では良い思い出だ)わけで、10年以上の積み重ねがあるはずだ。その結果がCCCとの提携という結論なのかもしれないが、なんとも未知数だ。
 ただ、発表や展示の雰囲気からすると小説・文芸などよりも雑誌・新聞の定期購読に力を入れていそうな感じだ。このあたりはまだ日本では未開拓の分野であるし、実現すればなかなか便利そうなので期待したいところ。

 ともかく、せっかくの電子書店(在庫も展示スペースも関係ない)なのだから、冊数がたくさんあるのが前提だ。どんなに欲しくたって、ないものは買えない。そもそも電子化されていなければどうしようもないのだ。だから、手間や費用が要るにもかかわらずマニアは自炊を選ぶのである(「プロテクトがあるのがイヤ」という理由もあるだろうが、それについては後述する)。そしてそこまでの気合いと資金がない一般ユーザーは、「じゃあ紙でいいや」となる。だから、口コミやテレビ、新聞などで話題になった本を検索したらちゃんと置いてあるような本屋でなければいけない。

 難しいことだとは思うが、シャープが目移りするほどたくさんの本を揃え、なおかつ検索しやすいシステムを実現できる(Amazonのようなレコメンドでもいいし、通販サイトでたまにあるチャットで人間が答えてくれるシステムもありではないだろうか)のなら、次世代XMDFが日本用のガラパゴスなフォーマットだろうが、シャープとTSUTAYAの囲い込みストアだろうが、ごく一般の、普通のユーザーは与り知らぬ話であり大した問題ではなくなるだろう。欲しい本がラクに買えて普通に読めればそれでいいのだ。

2.自社ハードウェアにこだわらない柔軟性
 GALAPAGOSの端末はAndroidベースなので、その気になれば次世代XMDFを捨ててePubに走ることも(まず無いだろうが)可能だろう。それよりも、AmazonのKindleのように他のAndroidマシンやiPhone/iPad、Windows/Mac/LinuxなどでGALAPAGOS用の書籍を読むリーダーアプリを出すべきだ(当然、どこまで読んだかをクラウド経由で同期できる前提で)。本が売れれば良いAmazonと違って、GALAPAGOSのハードウェアを売らなければならないシャープにはあまり美味しくない話かもしれないが、「いろんな機器で読めるけどやっぱシャープの端末がいちばんいいや」となるようなモノを作ればいい。

3.ユーザーの側に立ったシステム
 これはどういうことかというと、以前も似たようなことを書いたが、電子書籍の「保存性の悪さ」を何とかして欲しいということだ。
 書籍に限らず映像でも音楽でも、物理メディアに入った物ならきちんと保管しておけば長く保つし、版元が倒産しようが購入した店がつぶれようが手元のメディアには何の影響もない。ところが、電子化したものは半永久的に保存される代わり、認証ができなくなったら開かない、再生用の機器がないなど、権利者の都合に振り回されてしまうことがありうる。
 それこそ映像や音楽なら、もともと物理メディアの規格などがあるから諦めもつくが、本にそんなものはそもそもないわけで、電子化した途端にとんでもなく不便かつ不自由になってしまうのだ。「大人になって、子どもの頃読んだ本を読み返そうとしたら開けなかった」なんて結末は勘弁して欲しい(余談だが、こういうことがある限り紙の本はきっと無くならないと思う)。
 できれば、購入時にその場で認証するだけで変なプロテクトを掛けたりしないで欲しい。次世代XMDFに対応したリーダー(ソフトでもハードでも)を、サードパーティや個人が作れるようにしてほしい。もしライセンス料を徴収するつもりなら、それは止めた方がいい。

 この3点が達成できたなら、ガラパゴスとGALAPAGOSは一味違う、と思ってもらえるのではないだろうか。

 ……まあぶっちゃけた話、モノとしてはなかなか良い感触だったし、ePubやPDFが読めるならXMDFがコケても使い道あるんじゃないかなー、というのがガジェット好きヲタの密かな見解だったりするわけですが。

Posted via email from 物欲スクラップブック

このブログの人気の投稿

[自分用メモ] Sony Tablet Pのroot化、Link2SD、Swap設定、フォント変更

こんばんは、モバ( Twitter @yubile 、 G+ )です。 プリモバイル版009Zが届いたのでいじり倒しています。SIMフリーになっていること(BB.exciteのSIMで確認、テザリングも設定を呼び出すアプリを使えば利用可能)と、意外なぐらい動作が速く(ただし純正ホームアプリを除く)防水&ワンセグ付きはありがたいところ。ただデフォルトのAPNだとMMSが送受信できなかったのと、root化の方法がなさそうなのが残念(Android 2.3なのでプリインアプリを凍結するために欲しかった)。   さて今日のネタは、折りたたみ式二画面タブレット、Sony Tablet Pをゴニョゴニョした話。いろいろとクセはありますが面白いマシンであることには変わりないので、root化したついでにいじってみた備忘録です。 ※なお、この記事に書かれていることを実行して何か損害があっても、ぼくや紹介したサイトの方々も補償はできません。くれぐれも自己責任でお願いします。   (1) root化 まず肝心のroot化ですが、Androidをいじり倒そうというなら避けては通れないXDAのフォーラムで、オールインワンツールが配布されています。ちなみに、オールインワンと言っても使用にはAndroid SDKをインストールしたWindows PCなどの下準備が必要です。   S.onyTablet.S v6.4 [ALLinONE] – new: R5A ROOT!!! automatic ICS ROOT!, JB ROOT! – xda-developers         最新の4.0.3 release5aにも対応していますので、うっかりアップデートしてしまった人でもツールの指示に従うだけでroot化が完了します。またroot/unrootだけでなく、公式ファームウェアのアップデート通知が出続ける件を解決するパッチなど、便利なツールもひとまとめになっていてありがたいです。     (2) Link2SD Sony Tablet Pは内部ストレージの容量が1.84GB(設定>ストレージより)と、Sに比べて少ないのが難点です。というわけで、アプリをSDカードにインストールしつつ内部ストレージにインストールしたかのように振る舞う Link2SD を使います。Androidも4.0以降になる

最近のパケット事情(または断捨離し損ねた通信契約の話)

こんにちは、モバ( @yubile )です。 かれこれ半年近く更新しなかったわけですが、今日もなんとなく生きています。 IIJmioを解約した のが昨年10月のこと。 その後ZenFone 7を衝動買いした結果、持ち歩くスマートフォンが現在4台です。 内訳はこんな感じになっています。 (1) iPhone XS Max(ソフトバンク:ウルトラギガモンスター+)=メイン (2) Zenfone 7(mineo:au回線 10GB通話付きプラン)=サブ (3) OPPO A5 2020(楽天モバイル)=モバイルルーター的用途 (4) Rakuten mini(DENT)=Edy、nanaco、WAON等 Google Pixel 3aも使っていたのですが、5台はさすがに多いのでしばらくお休みしてもらうことにしました。Android 12がリリースされたら真っ先にアップデートして試そうかなと思います。 ……本来のイメージはiPhoneとRakuten miniの2台持ちぐらいで済ませるつもりだったんですが、どうしてこうなった。 あと、Zenfone 7が楽天モバイルに完全対応してくれてれば、(2)と(3)は統合できたんですよねえ。アップデートお願いします>ASUSさま。 ちなみにRakuten miniに入れているDENTのeSIMは、いわゆる海外ローミング回線です。有効期間が365日と長い上に1GBが4.99ドルという、「とりあえず入れておくSIM」にピッタリのヤツです。ローミング先がドコモ回線なのでRakuten miniのロットに左右されますが、電子決済で通信が必要な場合に役立ちます……と言いたいのですが、問題もあります。いずれ別記事で。

非自炊的電子書籍生活・BookLive!編「自炊お断り!」な専用端末Lideoを買って みた!

こんばんは、モバ( @yubile )です。 PQIのAir Cardと、 加賀ハイテックのTAXAN MeoBank SD という、目的の被りそうなアイテムを同時に注文しちゃいました。届いたらレビューを書くつもりです。   さて、今日のネタは電子書籍サービス BookLive! の専用端末「Lideo(リディオ)」です。Sony Reader(PRS-650)、楽天Kobo touch、Amazon Kindle Paperwhite 3Gと来て電子ペーパー4台目、電子書籍端末という意味ではSH-07Cもあるので5台目です。iPadとNexus 7とSony Tablet Pだって電子書籍を読むのに使ってます。いやはや。iPad miniを買ってアプリ使い分けた方がよっぽどラクじゃねえの? とか自分に囁きたくなります。 そんなLideoですが、先に結論を言っちゃいますと 「WiMAXで本を買うの意外と快適」「凸版明朝&ゴシックが割と綺麗」「足りないものは解像度とフロントライトとまともな同期機能」「BookLive!&Lideoしか使わないならアリかな」「自炊派の方は選択肢たり得ません」 といったところ。 では行ってみましょう。なお、前述の他サービスや端末との細かい比較についてはInternet Watchの こちらの記事 をどうぞ。 Lideoハードウェアと初期セットアップについて  Lideoは「読書好きだが電子機器やインターネットには疎い」という層に向けて作られた端末だ。 だからボタン類は「本棚」「書店」「メニュー」「戻る」「文字」そして「電源」と、すべてに日本語表記がしてあったり、 “利用を開始するにあたってBookLive!のウェブサービスのアカウントなどは不要で、Lideoの電源投入後に誕生日、性別、パスワードを設定するだけで初期設定が完了する。メールアドレスさえも登録する必要がない” ( “インターネット要らず”の電子書籍端末「BookLive!Reader Lideo」発売 -INTERNET Watch より)のが特長だ。 ぼくの場合はもともとiPadとNexus 7でBookLiveを利用していたので、そのアカウントを入力してアクティベーションした。この場合、BookLiveに登録した他の端末としおりや本棚の同期ができるし(ただし後述するが残念な