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日本でiPadが発売されてから3週間。電子書籍が無視できない勢力になりつつあるアメリカと違って、日本ではまだまだ始まったばかり。
そんな状況下で最大限に電子書籍を楽しむにはどうすれば良いかということで、いろいろな方法を試してみた。
なお、自炊(紙の書籍を裁断してスキャンすること)に関してはあちこちで扱われているようなので、あえて触れない(というより裁断機もスキャナも持っていないので触れようがないのだが……)。
iPadで読書する方法は、大きく分けると(1)単体アプリ型、(2)ビューアアプリ型、(3)その他の汎用アプリ型の三つ。
(1)単体アプリ型
毎号が単体のアプリとして配信される形式。iPadが登場する前から存在するタイプでもあるが、雑誌ではWIREDがiPad版を出して話題を集めた。日本ではOZ magazineやGQ、VOGUE、じゃらんなど、単行本では「もしドラ」「iPhoneとツイッターは、なぜ成功したのか?」(どちらもiPhone版だが)や、京極夏彦「死ねばいいのに」、結城浩「数学ガール」などがこの方法をとっている。ボイジャーやYAPPAのビューアをベースにしたものが主流のようだ。
1アプリ1冊である意味わかりやすいが、ホーム画面がとっちらかるのが難点だ。ただ、iOS 4になってアプリの最大登録数が増えたこと、フォルダ分けができるようになったことを考えると意外と問題にならないかもしれない(毎回整理する必要が出てくるだろうが)。また、アプリである以上Appleの審査を避けられないことから、書籍の内容によってはリジェクトされかねないという問題もある。ちなみに、そもそもAppleとしてはアプリ型の書籍はあまり推奨したくないという噂もある。
とりあえず試してみたいというのであれば、「志高く 孫正義正伝」iPad版が現在無料で配信中なので読んでみることをお勧めする。ちなみにこれ、単体アプリ版の他に後述するボイジャー理想書店ビューアでも無料で入手することができる。ベースのアプリが同じなので読書体験としてはほぼ同じだ。
また、期間内は毎日更新される講談社「南ア・ワールドカップ Daily Magazine」で雑誌タイプのアプリを体験してみることもできる。操作性はあまりよくないが、とりあえず無料だ。ラーメンWalkerの東京版、横浜版なども無料配信されている。
(2)ビューアアプリ型
共通プラットフォームとなるビューアが存在し、In-App Purchase(アプリ内課金)の仕組み、あるいはWebベースのブックストアと連携することで本を買わせるタイプ。iPad用にはApple純正iBooksの他に、AmazonのKindle、マガストアやVoyager Booksなどがある。電子文庫パブリは現時点ではiPhone用のみだがiPad用のリリースを控えているそうで、これも同種の仕組みだ。アプリは1つで済むので見た目はスッキリするが、現時点ではひとつのアプリで済むほどコンテンツの質も量も揃っていないというのが問題だ(それを言ってしまえばどれも同じようなものなのだが)。
iBooksはページめくりが美しい上にストアが慣れたiTunes Store形式ということもあってぜひ使いたいのだが、Kindleともども英語の本ばかりなのが難点(ちなみにKindleも購入手続きはAmazon.comで行うのである意味よく慣れたインターフェースだ)。
というわけで必然的にマガストアや理想書店ビューアに期待するわけだが、読みやすさという点では昔から電子書籍を手がけるボイジャーが一枚上手。これはマガストアは雑誌、理想書店は単行本中心(といっても6/20現在で9冊だけとラインナップは相当に貧弱だが)という違いもあるが、そもそも画像ビューアに毛の生えたようなマガストアアプリ(上述の雑誌系単体アプリに使われている)がショボすぎるともいえる。
せっかく電子化するのなら、せめて文章はテキストデータを埋め込んで検索できるようにするなどの工夫が欲しいところ。また、雑誌にもよるがLite版と称して記事を削ったものしか売っていない場合もあり、アプリも本もまだまだ精進が足りない。
ビューアアプリ型にはソフトバンクが手がけるYahoo!コミックやビューンなどがある。前者はとりあえず無料で読めるという利点はあるものの使いにくさや読み込みの遅さはマガストアなどと五十歩百歩だし、後者は月額制で読み放題というシステムが効いたのかサーバがダウンしてサービスが中止になっているため、どっちもどっち、といった感じだ。
(3)その他の汎用アプリ型
i文庫HD(PDFやzipで固めたJPEGなども読める汎用性の高い青空文庫ビューア)、GoodReader for iPad(PDFビューア以外にも動画など含めて汎用性の高いファイルビューアとして機能する)、ComicGlass(いわゆる漫画zip向けのビューア)、CloudReaders(クラウド本棚機能をもつPDF/zip/rarビューア)、ePubリーダーとしてiBooksなどを使うことで、もう少しだけ快適な読書体験は可能だ。
たとえばみんなで作るePubファイル投稿・共有サイトepubs.jpには無料ダウンロード可能なePub形式のファイルがいろいろと置いてあり、ここからダウンロードしてiTunesの「ブック」にドラッグ&ドロップすれば、次回の同期でiBooksの本棚に登録できる。ちなみに、一文字違いのこのサイトも、9月サービス開始予定のiPad向け電子出版を企画しているようなので期待して待ちたい。
それから、電子書籍,電子出版の「でじたる書房」のように、PDF形式でダウンロード販売を行うオンライン書店も存在する。PDFで販売するオンライン書店は意外とあるのだが、Keyring PDFと呼ばれるDRM付きのもの(これはiPadどころかMacでも読めない)が多く、普通のPDFで販売しているところは貴重だ。ちなみに、GoodReaderはブラウザ機能を内蔵していて、これでアクセスして購入・ダウンロードまでできた。GoodReaderからは他の対応ソフト(i文庫HDなど)に受け渡すことができ、iPadだけで本の購入が完結するようにできるので便利だ。
さらに、需要は限られるだろうが、DLsite.comのような同人誌のDL販売も使える。漫画にはPDFや、JPEGをzipで固めた状態で売っているものも多いので、好みに合うならば楽しめるのではないだろうか。
全体的な印象として、権利のしがらみが少ない同人誌や、フットワークの軽いアダルト系には、iPadで対応できる形式のものがたくさん眠っていると感じた。できれば一般向けの書籍もこうして手軽になってほしいものだが、今の状況を見るとまだまだ無理そうだ。
とりあえず思いつく限りまとめてみたが、やはり読みたい本があるなら自炊がいちばん確実という点には変わりない。ただ、まだまだいろいろ始まったばかりでもあるし、iPadは電子書籍以外にもたくさん楽しみ方がある。じっくりいじり倒しながら、もう少し見守ってみたい。それでもダメなら自炊セットを買うつもりだ。