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ネットブックブームが一段落したという感じの今になって、シャープからNetWalkerという新しいブランドのモバイル機器が登場した。
メーカーサイト
シャープ – http://www.sharp.co.jp/netwalker/“>NetWalker
紹介記事
超小型モバイルインターネットツール登場! シャープ「PC-Z1」(PC Watch 西川和久の不定期コラム)
モバイルインターネットの新領域を狙ったシャープ「NetWalker」(ケータイWatch 法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」)
小さいものが好きで、シャープのモバイルデバイスにはいつも惹かれるもののリナザウをスキップしてしまった自分にとっては格好の獲物に見えたので、発表と同時にビックカメラ.comで即予約。実店舗での先行販売に合わせて予定より1週間ほど早く届けられ、この10日ほどいじりまわしている。
NetWalkerはひとくちで言えば、ネットブックとiPhoneの間を埋めるUbuntu搭載の超小型PCっぽいネット閲覧デバイス、だろう。
ネットブックのようにWindowsやx86向けのプログラムは動かないが、iPhoneより解像度が高く、Linux版とはいえフル機能のFirefoxやThunderbirdが動くので、ネットブック的な使い方をするだけならば違和感は少ない。
シャープが「モバイルインターネットツール」と銘打ってこのNetWalkerを出したのは、ネットブックではちょっと持ち運びが面倒だけど携帯電話にはちょっと不便を感じる、というような層を狙ったからだろう。
ただ、twitterやブログでNetWalkerを買ったという人はかなりスキルの高いマニア層に限られているように感じた(もともとそういうことを発信する人がマニア層だろうが)。
そしてそういった人の狙いはシャープの考えるものとちょっと違い、VNCでデスクトップ機からアクセスしてみたり、iPhoneと接続してテザリングでインターネットに繋いでみたりなど、「超小型Ubuntuマシン」というところにあるようだ。
ぼくは新しもの好きで小さなものやモバイル機器に目がないが、Linuxに触れた経験は少なく(学生時代はSolarisかWindows上のcygwinで済ませていた)、プログラミングもほとんど出来ないエセギークだ。
NetWalkerについてもせいぜいセキュリティ上必要そうなパッチを当てるためにリポジトリをいくつか追加しているぐらいで、自分からソースをコンパイルしてどうこう、というような使い方はしていない。
なので、ぼくの使い方はおそらくシャープが想定しているケースに近いのではないかと思う。
以下、そんなユーザーからみたNetWalkerの良い点と気になる点。
良い点
(1) FirefoxとThunderbirdが使えること。
MacやWindowsで慣れている、また、マシンや回線に負担がかかりそうな広告をブロックするAdblockや、ブックマークやパスワードを同期するXmarksなどのアドオンがそのまま利用できる。WebとメールだけならばOSやCPUアーキテクチャの違いを感じることは少ない(SilverlightやFlashは別問題。できればFlash Liteは発売時にプリインストールしておいて欲しかった)。
(2) なんといっても小型軽量。
大きめの電子辞書に近い形状とサイズ。デザインについて語るつもりはないが、少なくともパッと見にLinux搭載PC(っぽいもの)にはあまり見えない。持ち物としてギーク臭さは抑えられると思う。
個人的にはPCを持ち歩くことには全く抵抗はないが、荷物を軽くお洒落にまとめたい向きには良いことだと思う。
(3) 意外と使いやすいオプティカルポイント。
トラックポイントやスティックの光学版にも見えるオプティカルポイント。ここ数年はNokiaとiPhoneにしか興味がなかったので詳しくないが、最近のシャープケータイに載っている光タッチクルーザーとほぼ同じものらしい。
本体を両手で持って右手親指でカーソルを操作し、左手親指で左右クリックボタンを押すという風に想定されているようで、カーソルが意外と思い通りに動くので感心した。
(4) 静音かつ低発熱。
低消費電力を売りにしたAtom N270搭載ネットブックを2台(HP 2140とIdeapad S9e)持っているが、どちらも条件によってはかなりファンが回る(特にS9e)ためうるさい。
NetWalkerはファンレス(サイズからして当たり前だが……)かつHDDレスなこともあり目立つ動作音はない。夜中、ベッドの中でネットを巡るには実に具合がいい。
熱に関してはUSB機器を繋ぐと熱くなることがあるらしい(本体裏面に注意書きがしてある)が、キーボードとUSBメモリぐらいしか繋いだことがないため、今のところ実感したことはない。
(5) 液晶とLCフォントの組み合わせはいい感じ。
センチュリーのUSB接続液晶で4.3インチ800×480という解像度を使っていて時々キツいと感じることがあり、5インチ1024×600液晶というのが購入前の不安要素のひとつだった。
実際使ってみると確かに細かくてメニューやダイアログは見づらい時もあるが、思ったほど辛くはない。シャープのLCフォントはザウルス時代にもお世話になったが、やはり便利だ。
気になる点
(1) 入力デバイスは疑問。
NetWalkerの入力デバイスはオプティカルポイントとタッチパネルの2つのポインティングデバイスがある。一見便利そうに見えるのだが、ここにちょっとした混乱がある。
オプティカルポイントは思ったよりマシとはいえ、素早くポイントするなら直接タッチした方が早い。が、タッチパネルでは右クリックや中クリックはできない。たとえばブラウザでコンテキストメニューを多用するなら当然オプティカルポイントでなければならないのだが、小さなリンクはペンでサッとタッチした方が気持ちいい。
ならUSBがあるんだからマウスか? とも一瞬思うが、せっかくマシンが小型軽量なのにマウスを余計に持ちたくないし、またマウスを使うにはNetWalkerをテーブルや机に置くことになり、そうすると高精細な画面のおかげでかえって使いにくくなる(これは外付けキーボードでも似たようなものだ)。
ちなみに、キーボードに関してはネットで言われているほど悪いとは思わない。キーレイアウトからして、もともと長文を打つことを想定したキーではないと明らかに分かるからだ。しっかり押し込まないと認識されないことがあるのは正直いらつくが、ペンを持ったまま電子辞書を扱うように人差し指や中指1本でキーを押す分にはさほど気にならない。つまりは「運用の工夫でどうにかできる範囲」だと思っている。とはいえ、キーの感触自体は改善できるならして欲しいところではあるが……。
(2) 価格が少々高い。
Windowsが動くネットブックが5万円を切る価格で普通に買える現状、いくら小型軽量などのメリットがあるとはいえUbuntu搭載で同価格帯というのは(実際のコストはともかく)見た目かなり不利だと思う。タッチ&トライイベントを大々的にやって「触れれば分かる!」ということなのだろうが、もっと思い切った価格に出来なかったものか。
(3) リカバリメディアぐらい付けましょうよシャープさん。
サポート情報に「再インストール用microSDの作り方」が載っている。2GB以上のmicroSDを差し込み、サイトからスクリプトを落として実行すると自動的にリカバリメディアができるというもので、それ自体は難しい作業ではない。
が、それをユーザーにやらせるというのはNetWalkerのターゲット層に対してちょっと不親切じゃなかろうか。ちまたに情報がたくさんあるWindowsと違って、比較的親切ではあるものの基本的に自己責任、Do It Yourselfが基本のLinuxの世界。おまけにブラウザとメーラしか使ってなくたってある日突然調子が悪くなるのがPCというものなのだし、何かの時にリカバリメディアがあるとないとでは安心感が全然違う。
CD-ROMに比べれば高コストなのかもしれないが、2GB microSDにリカバリデータを入れて同梱すべきだったと強く思う。次モデルではぜひ改善して欲しい。
(4) 通信環境が不安定。
NetWalkerでインターネットに繋ぐには802.11b/gかイーモバイルなどのUSBアダプタを使うことになるが、ぼくの所では特に前者の無線LANがなかなか繋がらずに苦労した。現在は安定しているから良いようなものの、ネット無しのNetWalkerは驚くほど出来ることが少ない(せいぜいOpenOfficeで文書を作るぐらい?)。
(5) その他こまごまと。
バッテリーインジケータがえらく適当(moyashiさんのひとりぶろぐが対策を出してくださっている)だとか、なんだかんだで動作速度がもっさりしているとか、ワンタッチキーが暴発しやすいとか。まあ、キーボードといっしょで工夫で解決しているのであまりとやかくは言わない。
まとめ。
ひとことで言えば、「コンセプトと作りにちぐはぐなところがある」というところ。マシンの見た目の作りはなんとなくガジェットマニアを引き寄せるのに、そもそものコンセプトはもっとライトな使い方を想定しているという印象。ネットでの微妙な評価はそのあたりに起因するのだろう。
個人的には家庭内ネット端末としてとても重宝しているし気に入っているが、たぶん売れるとしたら次モデル以降のことだろうな、と思う。