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電子書籍に立ちはだかる”超えられない壁”…理想書店の場合

 
 少し前に、自炊せずに電子書籍を楽しむというテーマで記事を書いた。その時紹介したDLsite.com(http://www.dlsite.com)では、初めからePub形式で本を提供するサークルが現れるなどなかなか面白い状況なのだが、その記事ではよく分からなかったのであまり触れなかったのが、ボイジャーの理想書店(http://www.dotbook.jp/store/)、そしてeBook Japan(http://www.ebookjapan.jp/ebj/)だ。

 両者ともiPhone用アプリを提供しており(ボイジャーはiPad用アプリも出している)、アプリそのものにはさしたる不満はない。また、登録やDLはSafariで行わなければならないのも、アプリ内課金だとAppleの審査が通るコンテンツしか入れられないことを考えれば、「書店」アプリとして仕方のないことだと思う。問題は別の所にある。

 まずは理想書店について、声を大にして言いたい問題が二つある。

 一つ目。「なぜ、iPhone/iPadで読めない書籍がこれほど多いのか?」。というより「なぜデバイスによって読める本と読めない本が存在するのか?」と問うべきなのかもしれない。
 理想書店はPC/Mac/iPhone/iPadに対応しているが、iPad対応が44冊。iPhone対応が231冊。PC/Macでは講談社1社で1434冊。比べる意味さえ感じないほどの差だ(ちなみに講談社は京極夏彦「死ねばいいのに」の単体アプリは出したものの、iPad向け理想書店には1冊も出していない)。

 これが、「元素図鑑」のように画面サイズに合わせたUIで、図解やアニメーションをたっぷり使った本ばかりなら仕方ないとも思う。だが、理想書店の本は小説・文芸ジャンルが非常に多く、それらは言ってしまえば文字だけ(あっても多少の挿絵)なわけで、技術的にiPhone/iPadに対応することが難しいとは思えない。特にiPad版に関しては、期待が大きかっただけに「2ヶ月で44冊」という結果は残念すぎる。

 そしてもう一つ気になるのが、"閲覧期限"の存在だ。
 理想書店のFAQ(http://www.dotbook.jp/store/guide/item_285.html)には、

「(略)インターネット接続しながらWEBブラウザーで表示してお読みいただく作品には「閲覧」、いったんお使いのマシンにダウンロードしてお読みいただく作品には「DL」と書かれています。(中略)作品によって閲覧あるいはダウンロード期限が異なります。必ずご確認ください。ご購入作品(オンデマンド本をのぞく)は、直接こちらからお客様にデータをお送りすることはございません。」

とある。要するに、DL期限を過ぎればDLはできないし、閲覧期限を過ぎた本は読めなくなるわけだ。たとえば幻冬舎の「スピカ」というコミック誌は、DLはできず閲覧期限が180日となっている。
 もちろん、これらが無期限に設定されている書籍も存在する。すべて確かめたわけではないが、iPhone/iPad対応のものは基本的にそうなっているようだ。だが、理想書店では期限があろうとなかろうと、カートに入れて「購入」することになっている。

 半年で読めなくなる本を「購入」する? 紙の本なら紙がもつ限り半年だろうが1年だろうが10年だろうが手元に置いておけるというのに、傷むことのないデジタルデータがたかだか半年で読めなくなるというのはどう考えてもおかしい。それは「書店」ではなく「貸本屋」だ。もともとライセンスという概念のコンピュータソフトウェアならば承知で使っているのだから構わないが、書籍でこのようなやり方に「購入」という言葉を使うべきではない。

※ちなみに、個人的には動画配信もレンタルというのは止めて欲しいと思っている。ただ、本に比べて帯域も必要だし、ある程度は仕方ないかもしれない。とはいえ、低価格のレンタル版と、ちょっと値が張るもののDL可能もしくは視聴期限なし、という二段階を設けてくれれば言うことないのだが。

 Ascii.jpのインタビュー(http://ascii.jp/elem/000/000/529/529708/)で、株式会社ボイジャー代表の萩野正昭氏は「大前提として「特定のビューワ・環境でないと読むことができない」という制約を設けてはいけない、と考えています」と述べている。
 古くからのMacユーザーとして、ボイジャーはエキスパンドブック時代から馴染みがあるし、日本の電子書籍に関して多大な貢献をしてきたし、これからも貢献するだろうことを少しは理解しているつもりだ。だが、単なるひとりの「電子書籍を読みたい人間」として見ると、ボイジャーは言っていることとやっていることが矛盾しているとしか思えない。iPhone/iPadでは読めない本がたくさんあり、時間の経過という「環境の変化」で読めなくなるのだから。

(「電子書籍に立ちはだかる"超えられない壁"…eBook Japanの場合」に続く) 

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